広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第40回 「研究者をめざしている女子学生の方へ・・・エールを送ります!」

佐藤 友美

社会人博士コース


>> 研究室(ナノデバイス・バイオ融合科学研究所)ホームページ

すでに研究者になると決めている方も、まだ迷っている方もいらっしゃると思います。理系の世界は圧倒的に男性が多い環境ですし、今後やってくるであろう女性としての転機をどうすればいいかなど仕事にもプライベートでも不安に思うことがあると思います。私も不安はあります。でも、不安は想像しているだけでまだ見ぬ事象なので、「今」、深刻に心配することはありません。

私は半導体(LSI)事業部と研究所を経験してきました。事業部の頃は開発から量産まで関わっていましたので、日々の業務でいっぱいいっぱい。それまでの業務に疑問を感じる暇さえないような状態でした。そこへ仕事の転機です。研究所への異動となりました。仕事も変わりました。事業部でも研究テーマを持ってはいましたが、製品開発、不良対策が優先で、なかなか思うように進められませんでした。事業部での研究は、どうしても量産を意識したものとなりがちですが、ゆくゆくは製品に採用されるという喜びもあります。一方、研究所では研究テーマに集中できますし、より基礎的で、将来的に役立つであろうことを研究できます。さらにその知見を世に知らしめることも重要な仕事であり、大きな意味で業界全体に貢献することができるという喜びがあります。
研究所の方が研究環境という意味では整っているわけですが、事業部であっても研究できる環境はあると思いますので、どういうものを求めるかは自身の考え次第だと思います。
私の場合、仕事の内容もそれまでとは変わったわけですが、(まわりのみなさんにはご苦労をおかけしていたと思いますが)新しい仕事は新鮮で、興味をもってやることができました。専門知識はあるに越したことはありませんが、仕事をしながら学べることもたくさんありますし、知ろうする気持ちがあれば大丈夫です。最初のうちは理解できない言葉も多く、当然、発言もアイディアもだせずに焦ってしまう時間がありました。仕事を通じた会話の中で、得られることもたくさんあります。少し話がそれますが、わからないことにであったとき、上長に質問しよう・・・そんなとき、すぐに質問するのではなく、多少なりとも調べ、理解していること、理解できていないこと、自分はどのように考えているかなど、準備するように心がけました。(こんなこと、みなさんもうやっていますね。)疑問点が整理できます。あいまいなまま質問してしまうと、せっかく教えてもらったことがあいまいな記憶になってしまうことがあります。ポイントが絞れると記憶にも残るような気がします。
話を元に戻します。仕事の転機がやってきても、これまでの自分に経験がないからとか、初めてだから、という不安は、研究者をめざしている方なら、やればできます。大丈夫です。心配はいりません。
次に女性としての転機(結婚、出産、加齢に伴う体調不良等)です。そのときの最良の道を選択する・・・これに尽きると思います。私のまわりには結婚や出産を機に仕事変えたり、転職を余儀なくされたり、退職して長く家庭に入っていて最近仕事を再開したり、そういう女性がたくさんいます。でもどの人も家庭と仕事をうまく両立して、満足されています。みなさんそれまでの成果やスキルをお持ちで、あまり無理せず仕事をされています。(そういう意味では自分をアピールできる成果やスキルを持つことは大事だと思います。)今は女性に対する様々な制度もありますし、働き続けやすくなっています。こちらを優先するからあちらを諦めるのではなく、少しあとに回すだけ、と考えれば気持ちも楽になるかもしれません。仕事や職場が変わってもさきほどの仕事の転機の通り、また新しい道が開けます。もちろん、休職することなくずっと働き続けている方もいます。人それぞれなので、自分たちに合った道を探ればいいと思います。

最後に、私は能が好きなので、世阿弥の言葉を記します。
「時に用ゆるをもて花と知るべし」
物事の良しあしはその時に有用なものを良とする、という意味です。

高い志をもって研究者になろうと思っている女性たちに、心からエールを送ります!

(2011/10/11)


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