広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第96回 「単一電子トランジスタを用いた前立腺癌特異抗原の検出」
 
中島 安理
准教授
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所


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 私の研究室では最近Si単一電子トランジスタ(SET)を用いたバイオセンサーとイオンセンサーの実現を世界で初めて成功しました[Applied Physics Letters, Vol. 98, Art. No. 123705 (2011), Applied Physics Letters, Vol. 100, Art. No. 023704 (2012)]。
 SETを利用したバイオ・イオンセンサーの実現には、SETの室温動作及びアルカリ金属イオン等を含む緩衝液を用いるプロセスとULSI作製プロセスとの整合を両立させる必要があり、今まで報告がありませんでした。現在ではSETは種々の材料により実現されていますが、そのほとんどが低温でのみの動作に限られており室温動作SETはSi系材料を用いた場合の報告しかありません。私の研究室ではSiナノサイズドットを複数直列に配置する事によりドット1つ当たりの実効接合容量を減らし、室温動作を容易にしました。SETではクーロン振動を利用でき、原理的にナノワイヤトランジスタに比べてバイオ物質やイオンの検出感度を大きくできます。
 今回、Si SETを用いたバイオセンサーによって、前立腺癌特異抗原(PSA)の検出に成功しました。今回の検出はPSAのカットオフ濃度4ng/mlにおいてであり、SETバイオセンサーの実用化の可能性を開きました。この結果はApplied Physics Letters, Vol. 103, Art. No. 043702 (2013)に掲載されました。

 

(2014/07/02)



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