広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

第105回 「恩に報いるということ」
 
岡本 拓巳
博士課程前期1年
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所


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  私は中学卒業後,奈良工業高等専門学校に入学,5年間を過ごした後電子情報工学専攻科に進学しさらに2年間の合計7年間,金魚の養殖や郡山城跡が有名な奈良県郡山市に通いました.私は中学1年生の時から弓道部に所属していました.弓道の世界に入った者が初めに目を通す教本の第一頁に,射手すべてが心に留めておくべき精神の構え方が以下のような一節でまとめられています.

 「射は進退周還必ず礼に中り,内志正しく,外体直くして,然る後に弓矢を持ること審固なり.弓矢を持ること審固にして,然る後に以って中ると言うべし.これ以って徳行を観るべし.」
(弓を引くにあたり,常日頃から礼の精神を忘れず,内面の心持ちと身なりを正した上でそれから弓を手に取ることが大事である.そのような心構えで弓を手に取り,引くことで当てるのではなく中(あた)る射となる.射にはその人の心構えの高さがそのまま反映されるのだ.)

 私が引退した後の奈良高専弓道部の活躍は目覚しく,今年の8月25,26日には熊本県植木市で開催された第一回全国高専弓道大会にて見事団体優勝を収めることができました.第一回と言うのも,昨年までは各地域で開催される地区大会の結果を全国通信大会という形で競い合う様式で高専大会が開かれていました.この形式は昭和43年に第一回が奈良高専主管で開催されて以後,46年間続いた由緒あるものでした.それを各高専顧問の方々が中心となり,ひとつの全国大会としてまとめ上げようという努力の末の第一回全国高専弓道大会開催でした.私も植木市まで足を運び立ち会った後輩たちの試合中の射には,関係者や指導者の方々から受けた恩に報いようという心構えがあらわれているように思えました.
 私もお世話になった奈良高専弓道部のために何か形あるものを残そうと,顧問の先生や弓道部員の協力の下,これまで無かった名札掛けを製図から仕上げまですべて手作りで作成,恐縮ながら弓道部OB会代表として卒業の際に寄贈させて頂きました.写真は完成直後のためすべての札に筆入れが済んでいませんが,有難いことに現在も作業が進みながら道場に飾って頂いていると聞いています.
 私は「内志正しく」あるために必要なことは,受けた恩に報いる姿勢を忘れないことだと思っています.私は肉親をはじめ数えきれない方々の恩を受け,大きな怪我なく健康に過ごすことができました.ここ東広島市に引っ越し,広島大学院に通う今もそれは変わっていません.先生や研究員,先輩そして同級生から受ける小さな恩にも報いるつもりで日々を過ごしコツコツと研究を積み重ねることができればと思っています.



 

(2014/11/05)


 

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