広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

 

第171回 Coulomb's lawとHenry Cavendish
  

佐々木 守

 

半導体集積科学講座

 

 荷電粒子間にはたらく力を表したCoulomb's law は電気系の法則としてはOhm's law とともに非常に慣れ親しんだ法則である。

「それぞれの電荷量に比例する」は受け入れやすく、「距離の二乗に反比例する」は重力との類推から、また容易に期待できる。

 実際、Coulombは実験結果から導いたというより、当初からこの式を信じて実験は矛盾しなければよい程度に考えていたようである。

 

 Coulombが用いた「捻り天秤」は非常に敏感な装置で、現代に行れた再実験でも誤差は大きく、距離の冪数が1〜3乗程度になるそうである。

 驚きはここからで、Coulomb's lawの発見とされる1785年より10年以上以前1773年にHenry Cavendishは実験によりCoulomb's law を確かめており、距離の冪数の2乗からのズレをとして実験によって保証している。

 材料を軽くして感度を上げているとはいえ基本原理は小学校にある箔検電器と同じ測定器を用いてこの精度を保証している。

 現代の高精度で高価な測定器を使用できる身としては恥ずかしい気持ちにすらなる。

 

 Cavendishが行ったCoulomb's law の実験は間接的で直接「力」を測定しない(この当たりが、Coulombの行った実験が一般に受け入れられている原因かもしれない)。

 導体の球殻とその中の同心小球を接続して、球殻を帯電する。

 球殻と小球の接続を外して、その後、球殻を取り除き小球の帯電状態を検出する。

 Coulomb's lawが成り立てば、小球は帯電しない。

 この実験で小球の電荷は検出されない。

 次に、距離の冪数のズレを評価する目的で、検電器の感度を見積る。

 当初、球殻に与えた電荷量を比例的に減らしながら検電器で検出して、反応しなくなる電荷量を球殻に与えた電荷量に対する比として最小感度を求める。

 あとは電磁気学の計算(正確には静電界の計算)を行ってを保証する。

 

「物理の法則は実験によって保証されるものである」という原則に従った科学者として正しい態度であると思う。

 なお、Cavendishはこの実験結果を自分のノートに記載しただけで発表はしていない。

 後に(100年後)、Cavendish研究所の所長になったMaxwell がノートを見つけて公表している。

 Maxwell 自身もCavendishの行った実験をさらに改良してを確かめている。

 

参考文献:Wikipedia, 「Maxwell’s Approach on Coulomb’s Inverse-Square Lawクーロンの逆2乗則に関するマクスウェルの実験」Yasushi Kondo, Department of Physics and Masayoshi Kiguchi RIST Kinki University 3-4-1 Kowakae, Higashi-Osaka, Osaka, Japan(Web で検索して下さい)。

 

 

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