広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第3回 「釣り人の特権」
 
東 清一郎
 
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 瀬戸内の海はとても穏やかであまり荒れることがありません。沢山の島々が浮かび独特の多島美を形成しています。橋伝いや船で島嶼部まで足を延ばすと、風待ち宿場の面影を残す町並みや小さな漁村も多く残っていて、ゆったりとした時間の流れを感じます。海の水は澄んでいて驚くほどに綺麗な青をしているのです。
 そんな海で、サラサラとした波音を聞きながら釣糸を垂れるのはなかなかに楽しいものです。たまにしか行けないので腕の方はさっぱり上達しませんが、そんな三流釣り師にも海は家族分くらいの恵みを与えてくれます。釣ったばかりの新鮮な魚の味は格別で、こればかりは「釣り人の特権」ではなかろうかと、いつも思うのです。
 あれこれと工夫しながら仕掛けを手作りし、潮や天候を読んで釣行計画を立て、大物を夢見て砂浜に立ち竿を振る。大漁の日もあれば、釣れないこともある。一連のプロセスは研究に似てなくも無いかな…と思ったりします。自分で装置を作り、誰もやったことのない実験を試み、失敗を重ねた末に結果を得た時の高揚感は「研究者の特権」ではないでしょうか。たとえ学生であっても世界初に挑戦できるのは、応用物理という研究分野が海のごとく広く大きな世界だからと言えるのかもしれません。
 間もなく真珠色の魚体が美しいキス(鱚)のシーズンが開幕します。大海原に向かって思い切り竿を振れる日が待遠しくなって来ました。何と言っても釣りのいいところは、その日のうちに結論が出ることですから(笑)。

 
 

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