広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第47回 「大学の存在意義」
 
佐々木 守
 
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 日本における一般社会の大学の認識については、辛く厳しい大学受験を乗り越えて、そのご褒美として、のんびりと過ごせる4年間の休息期間と考えている人が少なくないように思う。ひょっとすると多数派かもしれない。一方、昨今の就職状況から、就職活動に関しては、その厳しさは認識されている。すなわち、大学とは就職先への橋渡し機関である。一般的な価値基準は、大学入試による選抜とその大学を修了することに比重が置かれている。大学で学ぶ内容そのものの理解の深さや独自の解釈などの比重は小さく、卒業に必要な単位を修得することが目的である。残念ながら、この状況は博士課程まで続いているように感じる。博士課程修了の実質的な判断基準は、いくつ学術論文を採択されたかで決まる。欧米では、大学の歴史の長さが主な要因かもしれないが、内容そのものへの理解や研究自体への比重が大きい。というより、それらが目的であることが当然として、すべての人に浸透しているように思う。結果として、単位修得があり、学術論文発表があるだけだ。この状況を変えるのは難しい。国家公務員上級職試験(名称は違うかもしれないが)合格者はキャリアと呼ばれる。キャリアという言葉をこのような意味に使うのは、日本だけかもしれない。

(2012/1/10)


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